軽い男じゃないのよ 男女逆転社会を舞台にしたジェンダーコメディ映画
女と見れば口説きまくる無神経な独身男ダミアン(ヴァンサン・エルバトス)。そんな彼は、ある日頭を打って気を失ってしまう。意識が戻り、なにかがおかしいと感じたダミアンだったが、いつも通り仕事に行くことに。しかし、オフィスは女性ばかり。突然上司になった同僚の女性にいつもと変わらない態度で接した彼は、すぐにクビになってしまう。友人のクリストファー(ピエール・ベネジット)のもとに行くと、妊娠中の彼の妻が産気づきそのまま病院へ。妻の出産後、すぐに育児休暇に入らなければいけなくなったクリストファーは、急いで仕事の代理を探すことに。そこで白羽の矢が立ったのがダミアンだった。クリストファーの代わりに美人作家の助手になり浮かれるダミアンだったが、そこで彼を待っていたのは女性上位社会での男性に対する性差別だった。
そこでは、女性中心に社会がまわっていて、男性は家事や育児に追われ、社会では不当な扱いを受けている。この世界の男性は、仕事で全く評価されないどころか、補佐的な仕事しかさせてもらえずちゃんとした仕事にもなかなかつけないし、容姿や身なりで価値をつけられ、性の面では男性は女性の浮気や欲望に振り回されるので、好きな服を着て言いたいことを言い、自分らしく振る舞うと「男らしくないよ」と言われる。そんな世界に絶句する主人公ダミアン。男女逆転の世界に迷い込む直前に一目惚れした女性アレクサンドラと再会したことから、話はロマンスの方向へ進んでいくが、ここでもよくあるラブストーリーが完全に男女逆転した状態で描かれていく。
最近セクハラや性暴力を告発する運動が激しくなっていて、男性も賛同するようになっている現状で、改めて男女が尊重し合える社会とはどういう世の中だろうとこの映画を見て考えさせられた。この映画の舞台である男女逆転の世の中では、男性がムダ毛の処理をするのも家事が出来るのも当たり前だし、男性はお茶汲み程度の仕事しかさせてもらえない、男性は女性の浮気や欲望に振り回されるし、真面目な話をしてもまともに受け止めてもらえないなど、女性が普段されている理不尽な扱いを男性が受けている世の中。
主人公のダミアンは女性作家の下でお茶汲みなど秘書の仕事をするのが嫌で、別な仕事を探したりする。ダミアンは元の世界での男尊女卑的な価値観から抜け出すことが出来ないし、アレクサンドラも男性に対する反発や嫌悪や女性上位の考え方をなかなか捨てられない。
社会が個人に割り振る役割分担が偏っていたり、「らしさ」を考え無しに受け入れ「男は女はこうあるべき」を押し付け合う限り、お互いを尊重し合える社会は来ないのではないか?男性の方が精神的に弱かったり、女性の方が精神的に強い部分もある。家事が得意な人や不得意な人がいる。「男らしさ女らしさ」というのは、男性や女性特有のものではなく、社会が人間に押し付けているもの。「らしさ」というのは、あやふやなものだなと考えさせる映画だった。
Netflixで配信中。
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