告発の行方 性犯罪被害者に対する偏見や傍観者の罪を告発した社会派サスペンス映画 その1
ミルという名の酒場から飛び出してきた若い男が、公衆電話から警察にレイプ事件が起きていると通報、彼の後を追うようにミルから出てきた半裸の女性が通りで必死に車を止めてそれに乗り込んだ…。
被害者の名はサラ・トバイアス(ジョディ・フォスター)。酔ってマリワナも吸っていた彼女を3人の男達が犯したのだという。
サラから事情を聞いた地方検事補キャサリン・マーフィ(ケリー・マクギリス)は、彼女とダンカン保安官(テリー・デイヴィッド・ムリガン)を伴ってミルに行き犯人達を確認する。
やがて事件の捜査は進み、犯人側の弁護人が真っ向から戦いを挑む姿勢を見せたことにより、キャサリンは様々な証拠を基に裁判の状況を予測するが、被害者に有利なことは何1つなく、彼女は渋々ながらも、3人の容疑は過失傷害との裁定の取引きに応じた。
この事実を知ったサラはキャサリンを激しく責め、深く傷つき悲しみにくれる。
そしてそんな彼女を、レイプの際に犯人達を止めるどころか暴行を煽ったクリフ(レオ・ロッシ)がからかい、彼のトラックにサラは何度も自分の車を激しくぶつけるのだった。
傷つき入院するサラを見舞ったキャサリンは、身も心も打ちひしがれてしまっている彼女の姿に、女性として検事として真にあるべき道を教えられ、再び事件を裁判の場で争う決意を固めた。
レイプを煽り、そそのかした男達を暴行教唆罪で告発しようという彼女は、サラの友人でミルのウエイトレス、サリー・フレイザー(アン・ハーン)に暴行教唆犯を特定してもらうが、その際サラが事件直前、暴行犯の1人、大学生のボブ(スティーヴ・アンティン)と寝てみたい、とサリーに言った事実が明らかになる。
窮地に立たされたキャサリンは、事件の夜警察に通報した若い男ケン・ジョイス(バーニー・カールソン)を探し出すが、彼はボブとの友情から真実を話そうとしない。
そして遂に裁判の日、サラが証言台に登った後、証人として事実を語るのはケンであった。
彼の口から語られ自白のもとにさらされたショッキングな事実は陪審員の心を動かし、暴行教唆の罪は認められ、それは同時に、サラに対する暴行の事実まで明らかにする判決となったのである。現代のアメリカが抱える深刻な社会問題に真っ向から取り組んだ社会派サスペンス映画。
主演のジョディ・フォスターが体当たりの演技でアカデミー賞主演女優賞に輝いた意欲作。
この映画でテーマになっているのは、婦女暴行がいかに女性の心身を傷つける卑劣な犯罪であるか、性犯罪の裁判において犯罪の細かい状況や女性に責任はないのかなど検察側に被害者が問い詰められるセカンドレイプ、社会的立場の違う女性検察官と被害者の対立と友情、性犯罪の裁判で被害者がお酒を飲んでいたかどんな服装をしていたかが判決などに不利に働くという理不尽な面、躊躇していた加害者の仲間が加害者に挑発され加わってしまうという男性性の悪い面、婦女暴行という犯罪と社会に蔓延る性犯罪被害者に対する偏見バイアスを告発する傑作社会派サスペンス映画です。
ジョディ・フォスターの熱演が、印象的です。
アカデミー賞受賞作で似たテーマの「プロミシング・ヤング・ウーマン」が話題になっている今こそ、男女問わず見て欲しい社会派サスペンス映画です。
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