追悼・千葉真一 タランティーノやキアヌ・リーブスなど海外でも愛された名優
俳優の千葉真一が82歳で死去。
『キル・ビル』など数々の名作に出演し、「サニー千葉」として海外からも愛された彼の訃報を米ローリングストーン誌も伝えている。
1974年の『激突!殺人拳』や1976年の『子連れ殺人拳』などで知られる千葉は、新型コロナウイルスに感染して8日から入院。
肺炎が悪化して19日に息を引き取った。
日本で200本以上の映画に出演した千葉は、空手、忍術、柔道、剣道の黒帯であり、1950年代後半に俳優としての活動開始。
1939年に福岡県で生まれた千葉は1959年、高倉健や梅宮辰夫を輩出した「東映ニューフェイス」の第6期に合格。翌年にテレビドラマ「新 七色仮面」で主演デビューを飾ると、深作欣二監督のデビュー作『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』(61)を皮切りに「柔道一代」シリーズなど数多くの映画で主演を務める。
そして1968年から5年間にわたって放送されたハードボイルドなアクションドラマ「キイハンター」で、一気に国民的人気俳優の仲間入りを果たした。
千葉のキャリアを振り返るとなれば、やはり深作とのタッグは欠かせない。
前述の『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』でお互い映画監督・映画主演デビューを飾った2人は、その後同作の続編をはじめ、「ファンキーハットの快男児」シリーズや「キイハンター」など、数多くの作品でコンビを組む。
『ギャング対Gメン』(62)、『カミカゼ野郎 真昼の決斗』(66)、『仁義なき戦い 広島死闘篇』(73)、『北陸代理戦争』(77)、『ドーベルマン刑事』(77)、『柳生一族の陰謀』(78)、『宇宙からのメッセージ』(78)、『赤穂城断絶』(78)、『復活の日』(80)、『魔界転生』(81)、『里見八犬伝』(83)、『必殺4 恨みはらします』(87)、『いつかギラギラする日』(92)、そして深作の遺作『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』(03)。友情出演の2作品を含めれば、実に20作もの映画でタッグを組んだことになる。
師弟関係であり盟友でもあった深作がこの世を去った2003年、千葉はクエンティン・タランティーノが深作に捧げた『キル・ビルvol.1』(03)に、世界最高の刀匠・服部半蔵役として出演。この役名はタランティーノが大好きな千葉出演のテレビドラマ「影の軍団」から付けられたもので、劇中のナレーションはテレビ版「柳生一族の陰謀」から引用したものだ。
タランティーノは過去にも、初めて書いた脚本である『トゥルー・ロマンス』(93)のなかで主人公が「殺人拳」シリーズの3本立てを観に行くシーンがあったり、『パルプ・フィクション』(95)でサミュエル・L・ジャクソンが語るセリフが『ボディーガード牙』(73)のアメリカ公開版の冒頭に出る文章であったりと、千葉の出演作から絶大な影響を受けたことが作品に顕著にあらわれている。
「ジョン・ウィック」に主演したキアヌ・リーブスが来日した際には、千葉を「アクションのマエストロ」と尊敬するキアヌのためにサプライズ訪問して、アクション談義に花を咲かせた。
「パルプ・フィクション」に出演したサミュエル・L・ジャクソンは、千葉真一を尊敬していて、タランティーノ監督を訪ねた千葉真一と対面したサミュエルは千葉を「サー」と敬意を表して呼び感動していた。
千葉自身も早くから世界に目を向けており、イギリスとアメリカの合作映画『武士道ブレード』(81)や香港映画『風雲 ストームライダーズ』、さらには「ワイルド・スピード」シリーズの第3作『ワイルド・スピード X3 TOKYO DRIFT』(06)など多くの海外作品にも出演して、海外では“Sonny Chiba”の愛称で親しまれてきた。
その国際的な活躍に対し、米アカデミー賞の公式Twitterも追悼のコメントを投稿した。
また一方で、日本のアクション映画界を盛り上げ、世界に通用するアクション俳優やスタントマンを育成するために「ジャパン・アクション・クラブ」(JAC)を設立した千葉。
いまやハリウッドの第一線で活躍する真田広之をはじめ、志穂美悦子や堤真一、伊原剛志、『カメラを止めるな!』(17)でブレイクしたしゅはまはるみら数多くの俳優たちを輩出するなど、後人の育成に力を注いできた。
また千葉自らアクション監督を務め、日本ではまだ地位が低かったアクション監督を監督と対等に意見交換したり予算や撮影期間の会社との交渉が出来るまでに、地位を向上させてきた。
プライベートでは2017年にこの世を去った女優の野際陽子との間に生まれた真瀬樹里が女優として活躍。1996年に再婚した一般女性との間に生まれた長男の新田真剣佑、次男の眞栄田郷敦がともに俳優としてめざましい活躍を見せている。
コロナ禍でも、ハリウッドでのアクション映画や本格時代劇映画の企画を考え、実現に向けて動いていただけに心残りだが、千葉真一が演じた柳生十兵衛などの勇姿は作品として映画の中で生きているので、繰り返し見て楽しみ憧れ続けていたい。
ビバ!サニー千葉!永遠に。
0コメント