明日の食卓 3人の母親と息子、「虐待死」という一線を越えさせるのは何か
神奈川に住む43歳のフリーライター、石橋留美子(菅野美穂)は、フリーカメラマンの夫・豊や10歳の息子・悠宇と暮らす。
大阪に住む30歳の石橋加奈(高畑充希)は、離婚してアルバイトを掛け持ちしながら10歳の息子・勇を育てる。
36歳の専業主婦・石橋あすみ(尾野真千子)は10歳の息子・優を持ち、サラリーマンである夫・太一は静岡の家から東京に通勤している。
それぞれ忙しく幸せな日々を送っていたが、ある些細なきっかけで次第にその生活が崩れていく。同じ“石橋ユウ”という名前の小学3年生の息子を育てる、住む場所も家庭環境も異なる3つの石橋家が辿る道とは……。
椰月美智子の同名小説を「糸」の瀬々敬久監督が映画化、家族の光と闇を紡ぐ社会派サスペンスドラマ映画。
優しい夫の太一と賢く優しい息子の勇に恵まれているが、良家の家の妻に相応しい妻や母親であるために夫の太一の顔色を伺っているあすみ。
育児ブログやライターの仕事をしながら2人の息子の育児に奮闘してるが、兄弟仲が悪い2人の息子と仕事にかまけて育児や家事に協力的じゃないカメラマンの夫の豊に悩まされている留美子。
ダブルワークしながら女手一つで息子の勇を育てる加奈。
3人の母親は、家のことに無関心で仕事に逃避して家事や育児に協力しない夫や母親に過剰な責任を負わせる学校や社会のせいで、ワンオペ育児や経済的な貧困に追い詰められ、心身共に擦り切れる寸前で踏み止まっている。
学校での息子のイジメ被害や加害や不景気によるリストラや貧困が、「いい母親」であろうと頑張っている母親をさらに追い詰め、超えてはいけない一線を越えさせかけてしまった。
仕事に精一杯だったりリストラで大黒柱としてのプライドを傷つけられた夫は、家庭の修羅場から目を背けて仕事や酒に逃げて、育児放棄やD Vに逃避する。
子供を虐待死する母親は、マスコミが作り上げている鬼母ではなく、超えてはいけない一線を踏み止まっている母親と紙一重なのだ。
母親同士の連帯や夫の改心や社会のサポートを受けられる人はきっと幸運で、何事もなく平和に「明日の食卓」を迎えられる母親と子供はたまたまなのだ。
「子供の面倒をみるのは母親の役割」と無意識のうちにバイアスをかけて母親の苦労を思いやらない夫や社会の問題だけでなく、母親と子供の間にある母子の絆の中にある光と闇を見事に描いた社会派サスペンスで、菅野美穂や尾野真千子や高畑充希の演技派女優の等身大のリアルな演技と子役の演技に惹き込まれる社会派サスペンス映画。
0コメント