ミセス・ノイズィ ご近所トラブルから見えるディスコミニケーション
小説家で母親でもある吉岡真紀(篠原ゆき子)は、現在スランプ中。
ある日、真紀は隣の住人・若田美和子(大高洋子)から、早朝から激しく布団を叩くなどけたたましい騒音や娘の菜子(新津ちせ)を勝手に美和子が自分の部屋に連れ込むなど数々の嫌がらせを受け始める。
それは日に日に激しくなり、真紀のストレスは溜まる一方。
執筆は一向に進まず、家族ともギクシャクするなか、真紀は心の平穏を奪われていく。そんな毎日が続いていたが、真紀は、美和子を小説のネタに書くことで反撃に出る。
だが、真紀のいとこの直哉(米本来輝)が、真紀と美和子がベランダで泥試合してる動画をネットにアップしたのが話題になり、小説が若者たちの間で話題になる予想外の事態を巻き起こしてしまい、両者のケンカは日増しに悪化。
家族を巻き込みながら、やがてマスコミを騒がす大事件へと発展していく……。
昔に話題になった「騒音おばさん事件」を元に、天野千尋監督がオリジナル脚本で映画化。
最初は、激しい布団叩きに対する苦情などのご近所トラブルから始まる隣人同士の泥試合が、家族やマスコミを巻き込み大騒動になっていく展開が、スランプ中の小説家・真紀と真紀とことあるごとに泥試合を繰り広げる美和子の双方の目線から描かれる「羅生門」スタイルにすることで、働きながら子育てしてる真紀に皮肉や嫌味を飛ばしたり布団を激しく叩くなどの嫌がらせにムカついて美和子に対する怒りを小説の形で憂さ晴らしする真紀が書いた小説「ミセス・ノイズィ」の美和子をモンスターとして一方的に悪者にするキャラクター描写や美和子と真紀がお互いに「自分を正しい相手は間違ってる」と思い込んで泥試合を繰り広げたりなど、いとこの美和子の小説を自分がアップした動画と連動させた炎上マーケティング的な売り方をしようとする真紀のいとこの直哉や扇状的で底の浅い内容や世間で話題になっているものにろくに事情を知らない人が簡単に話題に乗って盛り上がって消費する大衆の愚鈍さを含めて、いかに人は自分の立場や目線でしか狭い見方で見られないかがダークなヒューマンコメディとして描かれていて、ワンオペ育児と仕事の両立に苦労している真紀に関わらず仕事に逃避して他人事のようにする真紀の夫の裕一(長尾琢磨)のリアル感もリアルな、ネット炎上が非難されてもなかなか誹謗中傷が収まらない現代日本を蝕むディスコミニケーションの問題をリアルに描いたサスペンスコメディ映画。
篠原ゆき子さんや大高洋子さんなどのリアルな演技が、見事。
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