マトリックス・レザレクションズ よもやよもやのホントのマトリックス完結編

機械達との戦いの果てに死亡したネオ(キアヌ・リーブス)は、機械によって蘇生させられてから長い間マトリックスにつながれ、ネオとしての記憶を自作のゲームのストーリーだと思い込まされた上で、トーマス・A・アンダーソンとして生活させられていた。 
 トーマス・A・アンダーソンは時折現れる幻覚症状に悩まされ、サンフランシスコで精神科のアナリスト(セラピスト)(ニール・パトリック・スミス)から精神を安定させるための青いピルを大量に処方してもらいながら生活を送っていた。
自身はゲーム会社のデウス・マキナ社に所属する世界的なゲームデザイナーで、今は「バイナリー」というゲームを開発しており、過去には「マトリックス」という3部作のゲームを大ヒットさせた。
「マトリックス」3部作は主人公のネオが自らの命と引換えに人類を救い物語が完結していたものの、親会社のワーナー・ブラザーズ社から圧力を掛けられ、「マトリックス4」の制作を余儀なくされる。
結果、同僚たちの会議は「リブート」や「リメイク」はない、もしかすると「マトリックス5」も作るかもしれないなどと大いに盛り上がる。
しかし、完結したシリーズを再開すること自体にトーマス・A・アンダーソンは難色を示していた。 
 ある日、トーマス・A・アンダーソンは同僚とSIMULATTE(シミュラテ)というカフェに行き、入店して来たティファニー(キャリー・アン=モス)という子連れの女性に同僚が下心から声を掛けてトーマス・A・アンダーソンを紹介すると、ティファニーは再会を願った。 
 また別の日、同じカフェで再会して会話をすると、ティファニーには家族がおり子育て中で、ググってトーマス・A・アンダーソンがゲームデザイナーであることや独身であることを知っているとのこと。
さらにティファニーは「マトリックス」のトリニティから影響を受けてバイクを乗り始めたなどと話すが、お互いに本当は誰のことか思い出せずにいた。 
 その後、トーマス・A・アンダーソンが再び職場で仕事をしていると、オンラインゲームのアップデートを恨んだ14歳の少年から犯罪予告が届き、同僚たちと揃って勤務先のオフィスビルから脱出する必要が生じたが、所持するスマートフォンには何者かがオフィスビルの一角にあるトイレに向かうようにメッセージを送ってくる。
指示通りトイレに向かうと「マトリックス」のキャラクターであるモーフィアス(ヤーヤ・アヴドゥル=マティーン2世)が立っており、赤いピルを見せてネオとして現実世界へ帰還するように迫り、さらには変形する鏡の中に手を入れて仲間に状況を伝えるが、トーマス・A・アンダーソンにとってネオは自身が開発した「マトリックス」というゲームのキャラクターであり、モーフィアスの要求は「自分が作ったゲームの世界に入ってネオになれ」と言っているようなもので、モーフィアスの実体化の件も含めて自身の幻覚症状の再発を疑うしかなかった。
さらにトイレに警官隊が突撃して銃撃戦が始まり、命からがらオフィスに逃げるとエージェント・スミス(ジョナサン・グロフ)まで銃撃戦に参加する事態となって、この状況が幻覚であるように願うとアナリストの施術室に居ることに気付く。
アナリストが、施術を受けに来るまでの記憶について質問すると、トーマス・A・アンダーソンは記憶にないと言い、同僚からは自分がビルを飛び降りそうになったところを皆で引き止めたと聞かされたと説明した。
同僚の話から、犯罪予告も銃撃戦もなかったことを推測できた。 
 ある日の夜、時折フラッシュバックして来るネオとしての記憶は自分自身のことかも知れないと思い、ビルの屋上から飛ぼうとすると、モーフィアスの仲間のバッグス(ジェシカ・ヘンウィック)から制止され、ビルの清掃員として働いていた時に、トーマス・A・アンダーソンがビルから落ちずに飛行するところを目撃してマトリックスに居ることに気付いたとの事実をバッグスから伝えられる。
続いてトーキョーの新幹線車内につながる扉へ案内され、車内のトイレから再度モーフィアスが居る部屋に案内される。
モーフィアスはネオと最初に会った時の部屋を再現して多少なりとも安心させた上でトーマス・A・アンダーソンに対して再度説得を行い、赤いピルと青いピルを差し出して各々の効果を説明すると、トーマス・A・アンダーソンは今まで飲んでいた青いピルではなく、ネオとして赤いピルを服用することを決心する。
その直後、アナリストが現れてネオを鏡に引き込もうとし、居場所を察知した敵が乱入して銃撃戦が起きる。
部屋から急いで逃げたが新幹線も急襲されたため、敵の攻撃を回避して車両のトイレにあった小さな鏡に突入し、荒廃した現実世界の人工子宮で目覚めて起き上がると、突如として現れた見知らぬ機械に身体をサルベージされるとともに、自身と対になった向かい側にある人工子宮に未だマトリックスにつながれている状態のトリニティが居ることを目撃する。 
 その後は、マトリックスに囚われて偽の記憶を植え付けられ、マトリックスにのみ存在する架空の家族との生活が手放せなくなったトリニティを現実に引き戻すため、ネオは仲間の支援を受けつつ、60年以上というブランクで生じた戦意喪失や能力低下のリハビリをしながら再び戦いに身を投じて行く。
「マトリックス」3部作の後で、よもやよもや製作された真の完結編。
「マトリックス」真の完結編のこの映画と「マトリックス・レボリューションズ」は、「新世紀エヴァンゲリオン」の一応の完結編である旧エヴァ2作品と新劇場版の完結編「シン・エヴァンゲリオン」と似たような関係にある。
ご存じの通り、「マトリックス」シリーズの完結編「マトリックス・レボリューションズ」は、賛否両論だった。
ワーナー・ブラザースから、ウォシャウスキー兄弟にシリーズの続編やリブートの企画が持ちかけられても、この映画でトーマス・A・アンダーソンのようになかなか続編に着手しなかった。
「新しいバレット・タイムが必要だ」
だが、かなり月日が流れてラナ・ウォシャウスキーが両親を亡くし、両親の死の悲しみを癒すために作ったのが、この映画。
それを踏まえて見ると、マトリックスの支配下にあったトーマスが、再び戦いに身を投じるのが、失ったはずの最愛の女性トリニティを救うためという切実な想いに、両親を亡くし取り戻したくても出来ないラナ・ウォシャウスキーの祈りが込められているようで、「マトリックスvs人間」の戦いを描いているが、軸にあるのは「マトリックスの支配から逃れようとする人間の革命の戦い」ではなく「ネオとトリニティの運命的な絆の愛の物語」としてキレイに着地する美しいラストに仕上がっていた。
今回は、ネオよりもトリニティが、どのように自己を取り戻すかの葛藤、トリニティの本当の宿命と役割が、#MeTooなどのフェミニズムやトランスジェンダーのウォシャウスキー姉妹の葛藤を踏まえているのが、よりユニークでリアル。
アクションは、バレット・タイムのような革命的な視覚効果は目立たないけど、重力を無視したような動きとパワフルなガンアクションとカンフーアクションとスピーディーなカーチェイスやスリリングなバイクアクションが満載で、ゲーム「マトリックス」の新作を作るためにアイデアを語るシーンで語られる「マトリックスとは何か?」の感想が様々な考察や自己批評がリアルに取り入れられるメタな感じがニヤリとさせられる俺たちがホントに見たかった「シン・マトリックス」というべきマトリックス完結編。

daiyuuki 全身当事者主義

全身当事者主義。ワーキングプアや毒親やブラック企業などのパワハラやモラハラに苦しみ戦い続けてきた立場から書いた、主にメンタルヘルス、LGTB、ヘイトスピーチ、映画やライブのレビューなどについてのアメブロの記事から、厳選して共有していきたい記事だけ、アメブロと連携します。 クリエイターリンクは、こちら↓ https://lit.link/daiyuuki

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