イップ・マン 継承 ドニー・イェンがブルース・リーの師匠イップ・マンを演じたシリーズ第3作
イップ・マン(ドニー・イェン)が、イギリス人ボクサー・ツイスターを倒してから10年後の1959年。
勉学のため長男チュンを故郷の佛山に帰したイップ・マンは、愛妻ウィンシン(リン・ホン)と小学生の次男チンと共に香港の街に暮らしながら、詠春拳の普及に努めていた。イップ・マンの名声を聞きつけて弟子入り志願者が大勢おり、その中にはブルース・リー(チャン・クォックワン)もいた。そのためイップ・マンの時間の大半は武術のことに費やされ、多忙のためかウィンシンとの約束も忘れがち。
やっと手に入れた平穏な暮らしを喜びながらも、ウィンシンはそれだけが不満だった。
その頃、香港の街は好景気に沸く一方、無法地帯と化しつつあり、イップ・マンの息子が通う小学校でさえ安全ではなかった。
香港を統治しているイギリスの警察長官と結託する不動産王フランク(マイク・タイソン)の企みによって、小学校の土地が奪われようとしていたからだ。
ある夜イップ・マンは、フランクの配下サン(パトリック・タム)の一派が小学校の校舎を放火しようとしている現場に遭遇し、サン一派と戦う。そこに偶然出くわしたイップ・マンの息子の同級生フォンの父親チョン・ティンチ(マックス・チャン)もイップ・マンに加勢して、サン一派と戦う。イップ・マンとチョンの活躍のお陰で、小学校は守られた。
小学校の校長からイップマンは校舎の警護を頼まれ、イップ・マンは弟子たちと毎日家族との時間を犠牲にしても小学校の警護に通い、香港の街を守っていた。
一方イップマンの知人ポー警部(ケント・チャン)は、裏でフランクと癒着しているイギリスの警察長官にフランクの犯罪の捜査の許可を得られず歯がゆい思いをしていた。
そんな時、なかなか小学校の土地の地上げが上手くいかないサンが、牙を向いた。
貧しい車引きで生活費と武館を開く家賃を稼ぐためにサンが仕切る裏闘技場で賞金稼ぎをしているチョンの境遇に付けこみ、サンは小学校の土地の地上げの邪魔をするかつてのサンの武術の師匠ティンの始末をチョンに依頼したのだ。
そしてサンはイップ・マンをティンが入院している病院に誘き寄せた隙に、イップ・マンの息子を拉致するという卑怯な手に出る。
イップ・マンはサンが根城にする造船所に駆けつけ、サンに対する怒りを抑えながらサンが求めるまま土下座するイップ・マン。
偶然チョンの息子もイップ・マンの息子と共に拉致され、息子のためにサンに背き拳を向けたチョンの助太刀と息子を守りつつ戦うイップ・マンの鬼神のような戦いぶりのお陰で、サンの悪事は警察によって明らかになり、小学校の土地をめぐる戦いは終止符を打った。
ウィンシンは、助かった息子を抱き締め号泣した。息子が危険に巻き込まれたのは自分のせいだと自分を責めるイップ・マンに、ウィンシンは涙ながらにあるショッキングな告白をする。
イップ・マンはショックを受け、家族との時間を疎かにしウィンシンの体調の悪化に気が付かなかった自分を責め、かけがえのない妻のために片時も離れず過ごし生きようと決意する。
だが地上げを失敗させるなど目障りなイップ・マンを亡き者にしようと、フランクがイップ・マンにムエタイの使い手を差し向ける。
エレベーターの中でウィンシンを守りながら、ムエタイの使い手を倒したイップ・マンは、愛妻を守るためにフランクと対決する。
だがイップ・マンの敵は、フランクだけではなかった。イップ・マンと同じ師匠に学びながらなかなか栄光を掴めず社会から不当な扱いを受けてきたチョンが、「イップ・マンの詠春拳は正統ではない」と詠春拳正統武館を開きイップ・マンに挑戦してきたのだ。
イップ・マンは、愛妻ウィンシンに背中を押され、チョンと対決するが、イップ・マンの心にあるのはどちらが正統な詠春拳なのかではなく、かけがえのない愛妻と家族に対する想いだった。
ドニー・イェン版「イップ・マン」シリーズ第3作。
まず話題になっていたイップ・マンとブルース・リーの関係については、冒頭の弟子入りを懸けたブルース・リーがイップ・マンの腕試しに挑むシーン(速さが自慢のブルース・リーにイップ・マンが仕掛ける煙草を使った腕試しは、神業の連続)とイップ・マンが愛妻ウィンシンのためにブルース・リーから社交ダンスを習うシーン(ブルース・リーがイップ・マンにチャ・チャを教える代わりに、イップ・マンがブルース・リーに詠春拳を教えた事実に基づいたシーン)。
前作では中国人としての誇り武術家としての誇りのために戦ったイップ・マンが、今回は愛妻ウィンシンや息子のために戦うという父親イップ・マンの面を強調したアクションシーンが胸アツ。
サンの造船所で、イップ・マンが息子を守りつつ敵と戦うアクションシーンは、イップ・マンの優しい父親ぶりがアクションで表現されているのがステキ。
イップ・マンがウィンシンとエレベーターに乗ろうとしている時にムエタイの使い手に襲撃され、エレベーターの中ではイップ・マンがウィンシンをムエタイの使い手の攻撃からきっちり守り、エレベーターで先にウィンシンを上に行かせるとイップ・マンがムエタイの使い手からウィンシンを引き離して守りぬくため階段を降りながらムエタイの使い手と戦うアクションシーンは、身体を張って愛妻ウィンシンを守りぬくイップ・マンの夫婦愛がアクションで表現されているのが、男女問わずキュンキュンさせられる。
ドラマ部分でも、イップ・マンが学校で喧嘩した息子に神対応したり、イップ・マンが愛妻ウィンシンとの限りある時間を片時も離れず過ごしたいと一緒に映画デートしたりウィンシンの通院に付き添ったりウィンシンのために滋養のあるスープを届けたりラブラブな夫婦関係がほほえましいけど、最も泣けるのが愛妻ウィンシンのためにイップ・マンが木人の練習をするシーンで、イップ・マンの優しい父親と旦那の姿が前作以上に表現されている。
仕事では悪辣なフランクにも娘を溺愛する面があったり、イップ・マンに対するライバル心を燃やしていても息子が危険に巻き込まれたならイップ・マンに加勢する誇り高い面もあるチョン・ティンチのキャラクター描写は、単純な勧善懲悪ではない描き方は前作以上。
イップ・マンとフランクの3分一本勝負では、マイク・タイソンお得意のデンプシーロール(ガッチリガードを固めて突進しながら連撃する得意技)に対抗するドニー考案の超低空の詠春拳の構えからの攻撃という総合格闘技の要素を絡めたバトルは、前作のツイスターとのバトル以上。
イップ・マンとチョン・ティンチの詠春拳同門対決は、3本勝負。第1ラウンドの棒術対決では、パワーのぶつかり合い。第2ラウンドの八斬刀(詠春拳独自の武器)対決では、スピードと技の対決。ラストラウンドの詠春拳対決は、凄まじい詠春拳の攻防が迫力たっぷりに描かれる。ラストバトルを決着するのがブルース・リーに関係した凄い技なのが、ニヤリとさせられる。
イップ・マンが息子を正しく導くため、かけがえのない愛妻や家族のために戦う誇り高い生きざまが前作以上に表現されたシリーズ最高傑作です。
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