犬猿 兄弟姉妹の面倒臭い愛憎劇
地方都市の印刷会社で働く真面目で堅実なイケメンの金山和成(窪田正孝)は、友人の連帯保証人になった父親が作った借金をコツコツ返済しながら、老後のため月々わずかな貯金をしていた。
地味な日々を過ごす彼のアパートに、ある日、強盗の罪で捕まった兄・卓司(新井浩文)が出所し転がり込んでくる。
和成とは対照的に金遣いが荒く凶暴で、娑婆に出て早々にキャバクラで暴れたり、和成の留守中にデリヘル嬢を呼んだりと、やりたい放題の卓司。
気性の激しい兄に頭を抱え密かに天敵だと思っていても、和成は卓司に何も言えずにいた。
そんな和成に幾野由利亜(ニッチェの江上敬子)はほのかに恋心をいだいていた。由利亜は小さな印刷所を営んでおり、和成はそこに頻繁に仕事を依頼していた。
由利亜は寝たきりの父親の介護をしながら親から引き継いだ会社をテキパキと切り盛りする優れた女性だが、太っていて見た目がよくない。
そんな彼女の妹・真子(筧美和子)は姉とは対照的に顔やスタイルがよく、チャラチャラしている。印刷所の手伝いをする傍ら、時々グラビア撮影やイメージビデオに出演するなど芸能活動もし、取引先の男性にも人気がある。
由利亜は仕事もできないくせにチヤホヤされる妹を天敵のように見ており、真子もまた節制できずに太る姉のことを小馬鹿にしていた。
そんな中、卓司が始めた胡散臭い輸入業の仕事が成功、和成の心に複雑な気持ちが芽生えはじめる。
さらに由利亜の気持ちをよそに和成と真子が付き合い始め、嫉妬した由利亜はストーカー化。
また、一向にエロまがいのグラビアから卒業できず焦って枕営業に走った真子はラブホテルで卓司と鉢合わせし、事態は急変する。
兄弟と姉妹の関係は、決定的に決裂する。
実力や長所を認めながらも、生き方や価値観の違いをどうしても許せない兄弟や姉妹の愛憎劇をリアルに描く中で、恋愛模様が絡みさらにどうしようもない泥沼になっていく展開を、片思いしている相手の和成が密かに見下している妹の真子と付き合っていることを知った由利亜が急に和成に冷たくしたり真子の悪口を吹き込んだり、和成が長年背負ってきた借金を兄貴の卓司に肩代わりしてもらって感謝しながらも卓司がプレゼントするアメ車を断ったり、卓司の商売が上手くいかなくなると和成が「やっぱり上手くいかないと思っていた」とほくそ笑む、などブラックコメディタッチで描いている。
窪田正孝、新井浩文、筧美和子、ニッチェの江上の熱演、クライマックスの卓司と和成そして由利亜と真子の決定的な対決シーン、そして衝撃の2段オチの結末が印象的で兄弟姉妹という切っても切れない関係の厄介さを絶妙に描いたヒューマンコメディ映画。
「確かに変わらねぇかもな、俺もお前も」
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