幕末太陽傳

頃は幕末--
ここ品川宿の遊女屋相模屋に登楼したのは、佐平次(フランキー堺)の一行。
さんざ遊んだ挙句に懐は無一文。怒った楼主伝兵衛は佐平次を行燈部屋に追払った。
ところがこの男、黙って居残りをする代物ではない。
いつの間にやら玄関へ飛び出して、番頭みたいな仕事を始めたが、その要領のよいこと。
売れっ妓こはるの部屋に入浸って、勘定がたまる一方の攘夷の志士高杉晋作たちから、そのカタをとって来たり、親子して同じこはるに通い続けたのがばれての親子喧嘩もうまく納めるといった具合。
しかもその度に御祝儀を頂戴して懐を温める抜け目のない佐平次であった。
この図々しい居残りが数日続くうちに、仕立物まで上手にする彼の器用さは、女郎こはるとおそめをいかれさせてしまった。
かくて、佐平次は二人の女からロ説かれる仕儀となった。
ところが、佐平次はこんな二人に目もくれずに大奮闘。
女中おひさにほれた相模屋の太陽息子徳三郎は、おひさとの仲の橋渡しを佐平次に頼んだ。
佐平次はこれを手数料十両で引受けた。
あくまでちゃっかりしている佐平次は、こはるの部屋の高杉らに着目。
彼らが御殿山英国公使館の焼打ちを謀っていることを知ると、御殿山工事場に出入りしている大工に異人館の地図を作らせ、これを高杉らに渡してまたまた儲けた。その上焼打ちの舟に、徳三郎とおひさを便乗させることも忘れなかった。
その夜、御殿山に火が上った。この事件のすきに、ここらが引上げ時としこたま儲けた佐平次は旅支度。
そこへこはるの客杢兵衛大尽が、こはるがいないと大騒ぎ。佐平次は、こはるは急死したと誤魔化してその場を繕い、翌朝早く旅支度して表に出ると、こはいかに杢兵衛が待ち構えていてこはるの墓に案内しろという。
これも居残り稼業最後の稼ぎと、彼は杢兵衛から祝儀をもらうと、近くの墓地でいいかげんの石塔をこはるの墓と教えた。
杢兵衛一心に拝んでいたが、ふと顔をあげるとこれが子供の戒名。欺されたと真赤になって怒る大尽を尻目に、佐平次は振分けかついで東海道の松並木を韋駄天走りに駈け去って行った。
日活100周年を記念し、川島雄三監督の傑作コメディ時代劇『幕末太陽傳』を最新技術によりデジタル修復。フランキー堺主演。
古典落語の「居残り佐平次」「品川心中」などを元に、居残りするはめになっても遊郭の遊女たちの用事を足したり客を上手くあしらったり図太く抜け目なく生き抜く佐平次を演じるフランキー堺の自由奔放の生きざまが、スマートでパワフルでスカッとします。
川島雄三監督が、当初構想した「佐平次が、スタジオを飛び出して街中に消えていく」ラストは、メタフィクション的な作品が許される今こそ見てみたかった奇想天外なオチ。
「てめえ1人の才覚で生き抜くからにゃ、首が飛んでも動いてみせらぁ」

daiyuuki 全身当事者主義

全身当事者主義。ワーキングプアや毒親やブラック企業などのパワハラやモラハラに苦しみ戦い続けてきた立場から書いた、主にメンタルヘルス、LGTB、ヘイトスピーチ、映画やライブのレビューなどについてのアメブロの記事から、厳選して共有していきたい記事だけ、アメブロと連携します。 クリエイターリンクは、こちら↓ https://lit.link/daiyuuki

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