悪人
土木作業員の清水祐一(妻夫木聡)は、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。馬込光代(深津絵里)は、妹と2人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日を送っていた。
孤独な魂を抱えた2人は偶然出会い、刹那的な愛にその身を焦がす。しかし、祐一は連日ニュースを賑わせていた殺人事件の犯人だった――。
光代はそんな祐一の自首を引き止め、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かう。やがてその逃避行の波紋は被害者の家族、加害者の家族の人生をも飲み込んでいく。
吉田修一の同名小説を映画化。
なぜ祐一は人を殺したのか?なぜ光代は殺人者を愛したのか?引き裂かれた家族の運命はどうなるのか?そして、いったい誰が本当の“悪人”なのか?それが、一番のテーマです。
被害者の女性は、ナンパされた旅館の女将の息子と加害者の二股をかけていた。加害者の祖母に言葉巧みに健康食品を売りつけた男。被害者をナンパした軽薄な旅館の女将の息子。底の浅い正義感で被害者、加害者家族を裁くマスコミと世間。彼らに罪は、無いのか。加害者と彼を愛した女は、同じ種類の孤独と閉塞感を感じていた。どうしようもなく惹かれ合った彼らを責められるだろうか。自首しようとした加害者を引き止めた彼女は、悪人なのか。見た人に重い問いかけを突きつける問題作です。
加害者の孤独な男を丁寧に内に秘めた孤独感を持った不器用に愛を求める人間として演じた妻夫木聡、加害者をひたむきに愛する女性を丁寧に自然体で演じた深津絵里、柄本明さんや樹木希林さん、加害者を幼い頃に捨てた母親を演じた余貴美子さんなど、素晴らしい演技を見せてくれます。ヒリヒリするような切ない映画ですが熱い感情を呼び起こす映画です。
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