ある少年の告白 キリスト教福音派の同性愛矯正施設に入れられた少年の葛藤を描いた社会派サスペンス映画

ジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)はアメリカの田舎町の牧師の父(ラッセル・クロウ)と母(ニコール・キッドマン)のひとり息子として愛情を受けて育ち、輝くような青春を送っていた。
しかし思いがけない出来事をきっかけに、自分は男性が好きであることに気づく。
ジャレッドは意を決してその事実を両親に告げるが、二人はその言葉を受け止めきれず、動揺する。
父から連絡を受けた牧師仲間が続々と家を訪れ、助言をする。
父は、「今のお前を認めることはできない。心の底から変わりたいと思うか?」とジャレッドに問う。悲しげな母の顔を見たジャレッドは、決心して同意する。
ジャレッドは母の運転する車で矯正施設に向かう。
治療内容はすべて内密にするなど細かな禁止事項が読み上げられ、部屋へと案内されると、白シャツの同じ服装の若者たちが弧を描くように椅子に座っていた……。
「その身を神の下に戻す」という名目で、プログラムの参加者に家系図とそれぞれの罪を書かせて「同性愛は生まれつきではなく、周囲の影響などで間違った行動をしたから」という事を教え込み、「男らしさ」を叩き込むために体の施設を矯正したり軍隊のような体力訓練をさせたり豪速球が飛んでくるバッティングセンターに立たせたり、「同性愛が悪徳と結びついている」と思い込ませるためにプログラム参加者に自分が犯した罪を書かせて他の参加者の前で自己批判させ「自分の罪深い行動を止めて神に赦しを請います」と皆の前で言わせたり、矯正プログラムの名目で洗脳する矯正施設の恐ろしさが、両親が望む「普通の息子」に変わりたい思いと「本当の自分は変わらない」という思いの間で葛藤するジャレッドの痛切な心情と自分の心を矯正プログラムの中で壊される参加者の苦悩を通して丁寧に描かれている。
キリスト教根本主義の家父長制を規範にして、ジャレッドの告白を受け入れられない牧師の父親の頑迷さと最初は夫の意向を黙認してしまうがジャレッドを守るために変わろうとする母の葛藤を通して、アメリカの家庭を蝕んでいる歪みや偏見も、丁寧に描かれている。
ラッセル・クロウとニコール・キッドマンの演技だけでなく、ルーカス・ヘッジスの演技に心揺さぶられる社会派ヒューマンサスペンス映画。

daiyuuki 全身当事者主義

全身当事者主義。ワーキングプアや毒親やブラック企業などのパワハラやモラハラに苦しみ戦い続けてきた立場から書いた、主にメンタルヘルス、LGTB、ヘイトスピーチ、映画やライブのレビューなどについてのアメブロの記事から、厳選して共有していきたい記事だけ、アメブロと連携します。 クリエイターリンクは、こちら↓ https://lit.link/daiyuuki

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