ミスエデュケーション キリスト教福音派の同性愛矯正施設に入れられた少女の葛藤と苦悩を描いた社会派サスペンス映画
1993年。交通事故で両親を亡くし、保守的な叔母ルースと暮らすキャメロン・ポスト(クロエ・グレース・モレッツ)は、同性の恋人コーリー(クイン・シェパード)を持つ高校生。
プロムの夜、彼女は車の後部座席でコーリーとセックスに及ぶが、運悪く同級生に目撃されてしまう。 それを知ったルースは、キャメロンをカソリック系矯正治療施設「神の約束」に入所させるのだった。
治療に消極的なキャメロンだったが、次第に同じ施設に暮らすはみ出し者のジェーン(サシャ・レーン)やアダム(フォレスト・グッドラック)と絆を深めていく。 コーリーと再会するために、表面上は治療に積極的になるキャメロンだが、その期待を裏切る出来事や施設に暮らす仲間の一人に悲惨な出来事が起こり、アダムやジェーンと施設を逃げ出すことを決意する。
エミリー・M・ダンフォースの青春小説を映画化。2018年のサンダンス映画祭ドラマ部門で、グランプリを受賞した。
アメリカのキリスト教は、性やセクシュアリティに対し厳格であることで知られている。自慰行為やエッチな本を読むことや婚前性行為や堕胎は罪であり、同性愛も罪であるとされている。1950年代は、同性愛を精神病として治療の対象となった。
キリスト教は、博愛と寛容を尊ぶ宗教だが、お国柄などで歪められてしまう場合もある。
厳格というか宗教の悪い部分が具現化したような価値観の下で、矯正治療施設では治療という名の洗脳行為が行われる。劇中で施設の仲間やカウンセラーとのグループセッションでキャメロンは、「優等生だった彼女に憧れていただけでしょう?」とコーリーへの恋心を否定されたり、「同性愛は神に反する行為」と繰り返し吹き込まれて、同性愛者である自分自身を憎むよう仕向けられる。
施設での矯正治療という名の洗脳は、腕力による暴力ではなく笑顔を振り撒きつつ「これが正しい。これが正常」という精神的暴力によって行われる。見ていて辛くなるくらいリアルで緻密に描かれる。クロエ・グレース・モレッツは、キャメロンの矯正治療や悲惨な出来事に心が折れそうになる苦悩や葛藤を、丁寧に繊細に演じ、新たな代表作となったストレートな青春映画です。
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