空白

はじまりは、女子中学生の万引き未遂事件だった。
スーパーの化粧品売り場で万引き現場を店長の青柳(松坂桃李)に見られて逃走した花音(伊東蒼)は、国道に出た瞬間、乗用車とトラックに轢かれて死亡してしまう。
だが、女子中学生・花音の父親・添田充(古田新太)は「娘が万引きをするわけがない」と信じ、花音の担任教師の今井若菜(趣里)やスーパーの店長の青柳など事故に関わった人々をモンスターのように追い詰めていく。
さらに、店長の青柳と女性ドライバーは、父親の執拗な追求にも増して、加熱するワイドショー報道によって、混乱の極みと自己否定に追い込まれる。真相はどこにあるのか……。
少女の母親である翔子(田畑智子)、学校の担任教師の今井若菜や父親の職場の充の弟子の野木(藤原季節)や青柳のスーパーのパート草加部(寺島しのぶ)をも巻き込んで、人々の疑念は増幅し、事態は思いもよらない結末へと展開する。
古田新太、松坂桃李初共演、吉田恵輔監督・オリジナル脚本で贈る「空白の時代」とそこに生きる人間の業を炙り出すヒューマンサスペンス。
この映画の着想は、本屋で万引きがあり店長が追いかけ万引き犯人が轢き逃げされて本屋がマスコミからバッシングされた実際の事件からで、吉田恵輔監督がマスコミの報道に違和感を感じたことから。
前半部分は、スーパーで起きた万引き未遂と轢き逃げ事件の当事者で周りや娘の父である充に追い詰められるスーパーの店長の青柳、娘の花音が轢き逃げされて亡くなった父親の充、ボランティア活動に熱中してる熱血女性でスーパーのパートの草加部、充の弟子の野木、真実より話題性を追うマスコミの、つぶれかけたスーパーで起きた万引き未遂と轢き逃げ事件から始まる真相をめぐるぶつかり合いとコミニケーションのすれ違いを、「花音は万引きをしたのか?何故逃げ出したか?」「店長は花音に何をしたのか?」がグレーで描きつつ、「自分が花音のことを理解してる娘は万引きしていない」と思い込んでいる花音の父親の充や青柳を守るために真相究明を求めたりお節介を焼き周りに自分の正義を押し付けるスーパーのパートの草加部や話題性と視聴率を追うワイドショーや事なかれ主義の花音が通っている学校などの自分の思い込みに取り憑かれた者達のコミニケーションのすれ違いが、凄まじく荒涼としている。
花音の轢き逃げ犯人に起きた悲しい出来事から、花音の父親の充が花音の知らなかった面を知り、ドン底に落ちた青柳や花音の父親の充に予想外の救済が訪れた後半は、「人は簡単に理解し合うことは出来ないけど、一歩踏み出すことが出来たら少しでもすれ違いを埋めることが出来るかも」と思えるほのかな希望が見えたヒューマンサスペンス映画。
受けに徹した松坂桃李やリミットを振り切っている古田新太や正義感が行き過ぎているウザさがリアルな寺島しのぶや田畑智子や藤原季節や趣里や片岡礼子の演技派俳優のアンサンブルが見事。

daiyuuki 全身当事者主義

全身当事者主義。ワーキングプアや毒親やブラック企業などのパワハラやモラハラに苦しみ戦い続けてきた立場から書いた、主にメンタルヘルス、LGTB、ヘイトスピーチ、映画やライブのレビューなどについてのアメブロの記事から、厳選して共有していきたい記事だけ、アメブロと連携します。 クリエイターリンクは、こちら↓ https://lit.link/daiyuuki

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