伊藤詩織さんの性被害裁判、東京高裁判決が確定し勝訴
ジャーナリストの伊藤詩織氏(33)が性被害を受けたと訴えて元TBS記者の山口敬之氏(56)に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は山口氏の上告を退けた。山口氏が同意なく性行為に及んだと認定して約332万円の賠償を命じた二審・東京高裁判決が確定した。
7日付の決定で、第一小法廷は憲法違反などの上告理由がないとだけ判断した。
二審判決は山口氏の反訴について、伊藤氏が著書などで「(山口氏が)デートレイプドラッグを使った」と表現した点は真実と認められないとして、伊藤氏に55万円の賠償を命じた。
第一小法廷は伊藤氏の上告も退け、二審が確定した。
二審判決によると、伊藤さんは2017年9月、山口さんを相手取り、慰謝料など1100万円の損害賠償を求めて提訴した。
主張は次のようなものだ。
2015年4月、当時、TBS・ワシントン支局長だった山口さんと就職相談のために会った。
東京都内で食事をすると、2軒目の寿司屋で記憶を失い、痛みで目覚めた。
そして、山口さんが宿泊していたホテルのベッドで、避妊具をつけずに性行為をされていることに気づき、その後も体を押さえつけるなどして性行為を続けようとされたという。
そうした伊藤さんの主張に対し、裁判所は証拠や証言、供述などをもとに、こう判断した。
・伊藤さんは、2軒目の寿司屋を出た後、「強度の酩酊状態であったものと認められ」、ホテルの居室で目を覚ますまでの記憶がないとする供述内容とつじつまが合う。
・伊藤さんがシャワーを浴びず、1人でホテルを出て帰宅した行動は、性行為が合意のもとだったとすれば、「不自然に性急であり」「ホテルから一刻も早く立ち去ろうとするための行動であったと見るのが自然」
・伊藤さんが同日中にアフターピルの処方を受けた行為は、避妊をしなかったことが「(伊藤さんの)予期しないものであったことを裏付ける事情と言える」
・山口さんがTBSのワシントン支局長を解任される前に、伊藤さんが友人や警察に相談した事実は、性行為が「(伊藤さんの)意思に反して行われたものであることを裏付けるものと言え」、警察に申告した時点では就職のあっせんを期待できる立場にあったから「あえて虚偽の申告をする動機は見当たらない」
一方、山口さんは、性行為を合意のもとと主張した。そして、伊藤さんが記者会見や手記などを通して被害を訴えたことで、自身の名誉を毀損されて信用が失われたほか、プライバシーを侵害されたとし、慰謝料1億3000万円や、謝罪広告の掲載を求めて反訴した。
裁判所は、山口さんの主張に対しては次のように判断した。
・山口さんが、伊藤さんをホテルに連れて行くと決めたのは、タクシーの車内で伊藤さんが嘔吐した時点で、乗車するまで酩酊の程度はわからなかったとした。ただし、寿司屋からその最寄り駅までわずか5分ほどの距離だったことを考えると、タクシーに同乗させた点に「合理的な理由は認めがたい」
・山口さんは、伊藤さんがホテルの居室で深夜に目覚めた際、「私は何でここにいるんでしょうか」と話し、就職活動について自分が不合格であるか何度も尋ね、酔っている様子は見られなかったと供述した。だが、伊藤さんの「私は何でここにいるんでしょうか」という発言自体が、居室に入ることを同意していない証だと言うべき。
・さらに、伊藤さんが寿司屋で強度の酩酊状態になり、ホテルの居室に到着した後も嘔吐し、山口さんの供述だと一人では服を脱ぐのもままならなかったとすることを考えれば、約2時間という短時間で、酔った様子が見られないまでに回復したとするのは、「疑念を抱かざるを得ない」
・山口さんの供述する事実の流れを見ると、伊藤さんがホテルの居室でシャワーを浴びず、早朝に1人でホテルを出たことと整合しない。
・ホテルでの件があった後、山口さんは伊藤さんへのメールで、伊藤さんから自分が寝ていた窓側のベッドに入ってきたと説明した。しかし、法廷での本人尋問では、山口さんは伊藤さんに呼ばれたので窓側のベッドから、伊藤さんが寝ている入口側のベッドに移動したと供述しており、話が矛盾する。
・山口さんは、性行為の直接の原因となった伊藤さんの直近の言動という「核心部分」で「不合理に」供述が変わり、「信用性には重大な疑念がある」 裁判所は両者の供述をもとに、伊藤さんの供述は、山口さんの供述と比較しても「相対的に信用性が高い」としたうえで、こうまとめた。
・伊藤さんがホテルの居室に入ったのは、自らの「意思に基づくものではない」
・酩酊状態で意識のなかった伊藤さんに、山口さんが合意のないまま性行為をした事実が認められる。
・伊藤さんの意識が回復し、性行為を拒絶した後も体を押さえつけ、山口さんが性行為を継続しようとした事実が認められる。
・それらから、山口さんの行為は、伊藤さんへの「不法行為」で、損害賠償額は330万円だと言える。
一審の東京地裁は2019年12月、「酩酊状態で意識のなかった伊藤さんに、山口さんが合意のないまま性行為をした事実が認められる」として、山口さん側に330万円の損害賠償の支払いを命じた。
また、名誉毀損だとして反訴した山口さん側の請求は棄却した。
東京地検は16年、準強姦(ごうかん)容疑で書類送検された山口氏を嫌疑不十分で不起訴処分としている。
伊藤氏は17年に記者会見して被害を公表。実名や顔を出して発言を続け、性被害を告発する「#MeToo」運動の高まりに影響を与えた。
性交に同意がないだけでは処罰されない現状の刑法の問題点も訴えた。
一方、ネットやSNS上で激しい中傷やバッシングを受け、投稿者らに賠償を求める複数の訴訟を起こしている。
今回の控訴審では、第一審に間に合わなかった伊藤詩織さんと山口氏が乗ったタクシーの運転手とホテルの清掃員の証言が採用されて、3つの論点が裁判で議論された。
1、山口氏は伊藤詩織さんに同意のない性行為、不法行為をしたのか?
2、伊藤詩織さんの山口氏に対する名誉毀損があったのか?
3、伊藤詩織さんが、負った怪我は山口氏によるものか?また性行為が行われた時間が、伊藤詩織さんは午前5時ごろ山口氏は午前2時から3時と争われたが、山口氏の根拠である伊藤詩織さんがアフターピルを処方されたイーク表参道のカルテは不同意性交の直後の伊藤詩織さんが不同意性交の詳細を正確に説明出来なかったこともあり不正確な記載がされており、裁判で証拠として提出された伊藤詩織さんとK検事の捜査段階の音声データから不同意性交が午前5時ごろに行われたと裁判官は確定し、事後の伊藤詩織さんの行動から山口氏は伊藤詩織さんに不同意性交するという不法行為をしたと確定した。
また不同意性交を、伊藤詩織さんが山口氏に強いられた際に負った膝などの怪我の責任を、山口氏に認め怪我の治療費を1審の賠償金に加えて認めた。
高裁判決は、伊藤詩織さんが自らの著書で山口氏の不同意性交を告発したことを、その目的は公益を図ることにあると認められるとしたうえで、「山口さんからデートレイプドラックを使用された」と主張したことについては、「真実と認められない」とした。
山口さんのプライバシーを侵害し、社会的評価を低下させたなどとして、この部分に関しては伊藤さんに55万円の支払いを命じた。
判決を受け、伊藤さんは「ここまでこれたことを感謝しています。ありがとうございました」と話した。
「(高裁で)もしも負けてしまったら、日本に住めなくなってしまうのではないかと、恐怖と隣り合わせたでした」
日本は、性被害に対して声を上げにくい社会だ。海外では「同意のない性行為」自体を犯罪とする国も増えているが、日本は刑法で性的同意年齢は13歳と定められるなど、性的同意の概念が低いと指摘されている。
今も刑法の見直しに関する議論が進められているが、会見に同席した伊藤さんの代理人の角田由紀子弁護士は、教育の必要性を強調する。
「男性が圧倒的に強い日本社会の中で、性行為は相手の同意を得て何かをすることが基本的な原則になっていない社会。国際的な基準に合った性教育をするべきです」
伊藤さんは、言う。「個人として言えるのは、声を上げたら必ずどこかに届くということ。こうしたケースがあるということを頭の隅に覚えていただいて、同じようなことが起きないように、毎日行動していただけたらなと思います」
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者のジャーナリスト・山口敬之さんから性暴力被害にあったとして、慰謝料など1100万円の損害賠償を求めた訴訟をめぐり、最高裁が7月7日付で上告を棄却した決定を受け、伊藤さんが7月20日、都内で記者会見を開いた。
伊藤さんは「当事者としての声を発信するのはこれっきりにしたい。これまでの歩みと得た学びを少しでも発信できるように、今後も伝えるという仕事で還元していけたらなと思っています」と被害からの7年間を振り返った。
約332万円の賠償金について、伊藤さんは「弁護士費用や医療費は、到底この金額ではカバーできるものではない」と話し、「民事裁判でいろいろなことが分かったことは有意義だったが、踏み出すのに壁がある、負担の大きい作業だなと感じます」と振り返った。
また、著書などでのデートレイプドラッグに関する言及が名誉毀損とプライバシー侵害にあたるとして、山口さんが伊藤さんに1億3000万円の賠償を求めた反訴について、第一小法廷は伊藤さん側の上告を棄却した。
伊藤さんに55万円の支払いを命じた二審・東京高裁判決が確定した。
伊藤さんは「自分の経験として語ったことが、話してはいけないこととして捉えられ、今後どういう風に自分の受けた被害を語っていいのかと感じた」と困惑した様子。
西廣陽子弁護士は「被害の公表後、警察庁からは、薬物の使用が疑われるケースではしっかり証拠保全をするようにという事務連絡が出ています。尿検査や毛髪検査も行われるようになり、伊藤さんの事件が起きた当時と比べると警察も明らかに変わってきたと感じています。またアメリカでの#MeToo運動や、日本でのフラワーデモなど、自ら声を上げるという運動が広がっていきました。公表したことによって性犯罪を取り巻く環境を変えていけたということに意義があったのかなと思っています」と振り返った。
代理人の佃克彦弁護士は「判決は性的加害行為の存在自体を認めながら、その被害を訴え出た言論行為について違法と判断した。非常にバランスを欠いている」と批判した。
2019年12月に東京地裁で判決が言い渡された後、伊藤さんの母は「まさか自分の家族に起こるとは思っていなかった。母親としては、一番娘には起きてほしくない悪夢だった」と話したという。
伊藤さんは「いろいろなニュースが流れる中で、自分ごととして捉えることはなかなか難しい。だからこそ、当事者の行為に私たちがどう向き合うのか。法律が追いついていないところに対して、一緒に目を配ってほしい」と呼びかけた。
今、山口さんに対して思うことを尋ねられると、「(山口さんは)自分は違法なことや犯罪を犯していないと繰り返しおっしゃっていた。それは日本の司法に対する問いかけだと思う。日本では同意のない性行為は犯罪ではないかもしれない。それを大きな声で言える社会なんだと思います。それに対して、私たちがどう受け止め反応するかが、今後の課題だと思っている」と話した。
伊藤さんは今も、「今日は大丈夫」と思う日もあれば、起き上がれない日もあるという。そんな日々を繰り返す中で、この数年、少しずつ素直に自分の心と向き合うことができるようになったと話す。
「それがある意味での回復なのかなと私はとらえています。自分の心に浮かぶことや気持ちに素直に向き合うことは、大変なことだし時間がかかることだけど、自分にはとにかく正直になってほしいし、周りは耳を傾けることが必要だと思います」。
今回控訴審判決が、最高裁で認定され、伊藤詩織さんと山口敬之氏の裁判は結審した。
先日、誹謗中傷対策として侮辱罪の厳罰化が決まり、性被害についての刑法改正が審議中で、伊藤詩織さんが訴えたことが実を結びつつあり、Twitterなどで未だに伊藤詩織さんを誹謗中傷するアカウントに対してより強く対策出来るようになって支援者にも報われた形になってきてる。
あとは、安倍晋三の後ろ盾を無くした杉田水脈や山口氏を擁護し伊藤詩織さんにセカンドレイプする記事を書いてきた月刊HANADAなどに対する名誉毀損裁判や性暴力の被害者の現状を伝えるジャーナリストの仕事や性犯罪の刑法改正という大仕事が待っている。
これからも、伊藤詩織さんの活躍と活動を支持して応援していきたい。
裁判に耐えられない山口敬之の証言の変遷
判決文
これからも伊藤詩織さんを支持します。
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