八日目の蝉 優しかったお母さんは私を誘拐した女でした
1995年10月東京地裁。秋山丈博(田中哲司)、恵津子(森口瑤子)夫婦の間に生まれた生後6カ月の恵理菜を誘拐、4年間逃亡した野々宮希和子(永作博美)への論告求刑が告げられた後、希和子は静かにこう述べた。
「四年間、子育ての喜びを味わわせてもらったことを感謝します」と……。
会社の上司で妻帯者の丈博を愛した希和子は彼の子供を身ごもるが、産むことは叶えられなかった。
そんな時、丈博から恵津子との子供のこと知らされた希和子は、夫婦の留守宅に忍び込み、赤ん坊を抱かかえて雨の中を飛び出す。
希和子は子供を薫と名づけ、各地を転々としながら、流れ着いた小豆島でひと時の安らぎを得る。
楽園のようなこの地で、薫に様々な美しいものを見せたいと願う希和子だったが、捜査の手は迫り、福田港のフェリー乗り場で4年間の逃避行は終わりを迎えた……。
秋山恵理菜(井上真央)は21歳の大学生となった。
4歳で初めて実の両親に会い、私たちこそが正真正銘の家族だ、と言われても実感が持てなかった。
世間からはいわれのないない中傷を受け、無神経に事件が書きたてられる中、家族は疲弊していった。誘拐した希和子を憎むことで自分を殺し、誰にも心を開かないまま、恵理菜は家を出て一人暮らしを始める。
そんな中、岸田孝史(劇団ひとり)に出会い、好きになった。
だがある日、自分が妊娠していることに気づいた恵理菜の心は揺れる。
岸田は家庭のある男だった。
そんな頃、恵理菜のバイト先にルポライターの安藤千草(小池栄子)が訪ねてくる。
千草は、あの誘拐事件を本にしたいという。
恵理菜を度々訪れ、親しげに生活に立ち入ってくる千草。
だが、恵理菜は放っておいて欲しいと思いながらも、なぜか千草を拒絶することが出来なかった。
千草に励まされながら、恵理菜は今までの人生を確認するように、希和子との逃亡生活を辿る旅に出る。
そして最終地、小豆島に降り立った時、恵理菜は記憶の底にあったある事実を思い出す……。
角田光代のベストセラー小説を映像化した深遠な人間ドラマ。
主人公は、不倫相手の子供を誘拐し4年間育てた希和子と、彼女に育てられた過去を引きずったまま大人になった恵理菜。
“母性"をテーマに、それぞれが抱える複雑な思いを、時に繊細に、時に力強く描出。変化を遂げていく女たちの姿に引き込まれ、最後まで目が離せない。 永作博美さんが演じる不倫相手の娘を母性愛に突き動かされて育てる希和子に対して人生を狂わされたと憎んでいた恵理菜が、希和子と恵理菜の幼児期の足跡をたどる中で、自分が希和子に愛されていたことを思い出して、母性愛に目覚めていく過程が丁寧に描かれています。
子供を産めない身体になり恵理菜に無償の愛を注ぐことで母性愛に目覚めていく希和子を永作博美さんが、実の両親に対して心を開けず原因を作った希和子を憎んで過去を封印してきたが過去と決別するために幼児期の足跡をたどる中で希和子に愛されていたことを思い出して母性愛に目覚めていく恵理菜を井上真央が丁寧に複雑な役どころを演じ、恵理菜の現在と希和子と恵理菜の幼児期を交互に描いていくことによって登場人物に深く感情移入することが出来るので、深い感動が味わえます。
0コメント