ヒメノワール
捕食者と被食者。この世界には、2通りの人間しか存在しない。
「なにも起こらない日々」に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田(浜田岳)。
同僚の安藤(ムロツヨシ)に、想いを寄せるユカ(佐津川愛美)との恋のキューピッド役を頼まれて、ユカが働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一(森田剛)と出会う。
ユカから、森田にストーキングされていると知らされた岡田は、高校時代、過酷ないじめを受けていた森田に対して、不穏な気持ちを抱くが・・・。
岡田とユカ、そして友人の安藤らの恋や性に悩む平凡な日常。ユカをつけ狙い、次々と殺人を重ねるサイコキラー森田正一の絶望。今、2つの物語が危険に交錯する。
古谷実の漫画を実写化。
前半の岡田と安藤の社会の最下層にいる人間同士のもやもやした鬱屈した思いや岡田とユカのコミカルなラブコメ、後半の過酷ないじめのトラウマからいじめの主犯・川島と自分を裏切った岡田たちを付け狙い連続殺人を引き起こす森田の暴走の落差が、余計に閉塞感や絶望に苦しみ足掻く岡田や安藤や森田の痛みや葛藤の痛切な心情を浮かび上がらせている。
「親友だよな?」と言いながら自分が片想いしている女性と岡田が付き合い始めると「絶交だ」と言う安藤やユカの以前の男性経験を聞いて嫉妬したりへこんだりする岡田の器の小ささ、いじめのトラウマから「自分はいない方が良い、死ね」という心の声を消すことが出来ず自己破壊的な暴走をする森田の閉塞感と絶望。過激なバイオレンス描写。
「ヒミズ」と並ぶ閉塞感に満ちた日本を描いたジャパニーズノワールの傑作。
濱田岳の善良な気弱さ、ムロツヨシのKYな気持ち悪さ、佐津川愛実の小悪魔ぶり、森田剛の無感動な狂気が、印象的。
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